ウィッグ選びの神ガイド
ウィッグを選ぶにあたり少々マニアックになりますが、初めての方にもわかりやすく、ご説明させていただいております。あまり表に出ない情報もありますので、必要な情報をピックアップしてみてください!
【1】ウイッグの形状・タイプ
左側のフルウィッグは フルウィッグ 全かつら 医療用ウィッグ ファッションウィッグ などと一般に呼ばれていることが多く、医療・ファッション用共に 頭全体を覆うタイプ のウィッグです。 円形脱毛症の方なども患部が広がったりするのを考慮して、フルウイッグを使用する場合もあります。
右側の部分ウィッグは 部分かつら ヘアピース トップカバー ハーフウィッグ エクステンション ポイントウィッグ 前髪ウィッグなどと一般的に呼ばれていることが多く、髪の毛の少ないところを補ったり、ボリュームアップに使ったりするタイプのウィッグです。 作られているサイズ・色も様々で利用者さんの希望にあったフォローに使うことができます。 最近は耐熱性の高い軽量のファイバー素材が主になり着け心地も快適になっています。
【2】髪の毛の種類
人毛ウィッグは原材料としての価格は高めで、質の良い人毛ほど価格は上がります。 私が扱う最高級ランクの人毛は 中国人のバージン毛 次に レミー毛、通常毛 の順番になります。 自然な風合いを出すことができ、パーマ、カラーでのアレンジが可能ですが、紫外線にも弱く毛先の方から染めた色も褪色もしてきます。 また、洗うとスタイルが保持出来ず、地毛の髪の毛と同じようにドライヤーセットも必要になります。 当然、人間の髪の毛ですので、髪の毛は水分を含んでいるので、人工毛( ファイバー )に比べ重さがあり、夏場や雨天時は水分を吸収し蒸れやすいのが特徴です。
人工毛 ( ファイバー・化繊毛 )は、ファイバーと聞くとツヤツヤの毛髪のイメージがありますが、現在、ウイッグメーカーさんの主力商品は、ほとんどがファイバーになり、逆に人毛のウイッグの方が珍しくなってきています。 使用されているファイバーは人毛と遜色ない自然な風合いのもので耐熱性・メンテナンス性にも優れヘアアイロンで熱をあててカールも付けられるものもあり、軽量なのが特徴です。 非耐熱ファイバー毛 もまだ、主力商品に交じり流通していますので、メンテナンスなどで、熱を当てるときは、必ず、ストランド(毛束)で 耐熱強度をチェック してからメンテナンスを行ってください。 非耐熱毛の良い所は耐熱毛に比べツヤ感が少ないので、部分ウィッグとして地毛に馴染みやすいことが挙げられます。
ミックス毛は現在、ウイッグメーカーさんの作りにもよりますが、おおよそ人毛がウィッグ表面に3割程度入っていることが多く、人毛・人工毛の良い所を合せもち、自然な風合いを出しています。 メーカーさんの考え方にもよりますが、ウィッグ全体に人毛を混ぜるのではなく、身体や首に触れた時自然な人毛の感触が感じられるように、耳周り・襟足周辺、パーツ的に人毛を使っているものも見受けられます。
人毛とファイバーウィッグの比較
人毛 | ファイバー |
長所 | 地髪同様に扱うことができる | 形状記憶されているので扱いが楽、軽量、安価 |
短所 | 寝ぐせも付きますし、雨や水分を吸収します | 静電気がおきやすく、毛先がちりつく |
手縫 | あります | あります |
ミシン | 手縫いより毛長を出すことができます | コスプレ用などに多く使われます |
質感 | 自然な光沢があります | ポリエステル特有の光沢があります |
手触 | 地髪とほぼ変わらない滑らかさがあります | 人毛に比べるとハリがあります |
パーマ | 可能ですが、絡みやすくなるのであまりお勧めできません | アイロンやカーラーなどを使ってクセをつけます |
カラー | 可能ですが、トーンダウン( 色を黒くはしやすく )トーンアップはできるが明るくなりにくいことが多く、ムラも注意が必要です。染められないモノもあります。 | 基本的にできません |
縮毛矯正 | 可能です。 原毛のクセを伸ばすことができ、絡みにくくなりますが、作業には注意が必要です | アイロンの熱で伸ばします |
ブロー | 可能 | あまり効果が見込めません |
アイロン | 可能 | 熱を当てると毛が伸びます、冷まして形状を記憶させます |
補修 | 経年劣化や脱毛もするので増毛も可能 | 安価なものが多いので買い替えが無難 |
分け目変更 | 簡単 | 割と簡単 |
【3】ベースの種類 ~ ① ネットベース
頭のかたちに象った内側の網目状の繊維のことを ネットベース と言われます。 色・素材・目の大きさなど種類はたくさんありメーカーによってデザインや質感もかなり異なります。 網目の大きさ、粗さにより通気性は異なりますが植えつけられる髪の毛の長さ、量、太さなどでも通気性には影響してきます。 また、現在のネットベースはひと昔前に比べ軽量ですが、耐久性が劣ることはありません。 水洗い、洗剤でも洗えますので雑菌を繁殖を防ぎ清潔に使用することができます。
【3】ベースの種類 ~ ② スキンベース( PU / ポリウレタン )
スキンベース とはポリウレタンやシリコンなどの樹脂で、人間の皮膚に似せて作った 人工皮膚 のことで、樹脂で固めてある分、通気性は悪くなりますが、分け目の部分など、より皮膚に近く、頭皮に見立てた形状になったものです。 特色を活かし、医療用ウイッグでもネットベースとの組み合わせや、分け目だけに使ったりします。 欠点としては前述した樹脂素材のため 通気性が良くないこと また、水洗を継続することにより徐々に硬化してくるため ひび割れ などの経年劣化が出やすく、ネットベースと比較すると耐久性に劣ります。
【4】スキンの種類 ~ ① モノスキン
モノスキンとはネットを肌に見立てた仕上げになっている 分け目 つむじ の仕様のことを一般的に言われます。 左の写真は下地を白バックにしてインナーネットを撮ったので黒地のネットが丸見えになりますが、下地に手の甲( 地肌 )を置いて撮影した右側の写真ですと肌色になるのでネットがぼけて地肌っぽくナチュラルに視認することができます。 黒色の網戸の原理と同じですね。
【4】スキンの種類 ~ ② シルクスキン
シルクスキンとは一般的にウレタンやシリコンを皮膚に見立てた 人工皮膚 の仕上げを言います。 右の写真のように、モノスキンに比べ、インナーネットの上に素材が一枚挟まるので、厚み・硬さが若干増してしまいますが、接近してもネット地が直接見えにくいのでリアルな地肌として販売されているモノが多いことがあげられます。
【5】髪の毛の植え方
左の写真ハンドメイドは、ネットに職人さんが、毛を1本1本手植えで植毛していくもので、コスト・時間がかかります。 フルオーダーで製作した場合、頭の型を取り、頭型にあわせネットを製作していきますので、装用感・フィット感は抜群になります。 右の写真、マシンメイドは毛髪と生地をミシンで縫製するため、製造工程に時間がかからず、コストが抑えられ+髪の毛の長さを出せる ことがポイントです。 縫い目に凹凸がでできるので、皮膚の弱い方等はチクチクすることがあるため、インナーキャップが必要になったり、ファッション向けのウイッグで使用される事が多い製法になります。 しかし、手植えのネットに比べストレッチが効きやすいので、頭の形に合わせやすく髪の毛の量が多い場合でも柔軟に対応できるのが特徴です。 また、通気性に関しても、スリット状になっているので風通感はいいと思います。
ウィッグの手植えの方法
ウィッグネットに髪の毛を結ぶ手植えの方法です。 ウイッグのネットに髪の毛を結び付けるのには特殊な縫い針を使います。 ちょっと写真では撮り切れないのですが… 縫い針の先は釣り針のような返しがついて、手に刺さると抜けません。 この返しに髪の毛を引っかけて、髪の毛を送ったり、戻したりして結び付けていきます! 当然返しは大きいほどたくさんの髪の毛が一気に掬えますが、私が持っているものも1~2本の髪の毛が掬える返し針と3~4本の髪の毛が掬える返し針を持っています。 言葉では解りにくいので、職人さんが作業をしているのを動画にしてみましたのでよければご覧ください。
人毛・ファイバー毛の手縫いの違い
左の写真はファイバー毛( 化繊 )の縫い付けです。縫い目をアップにすると…1つの結び目をよ~~く見てみると10本の毛髪( 毛束 )を一束にネットに結びつけているのがわかりますね。 右の写真は人毛の縫い付けです。1つの結び目を見てみると、1本の毛髪をネットに結びつけているのがわかりますね。
ファイバー毛の特徴としてある一定の熱を加えると形状記憶ができるという点で、たくさんの毛髪を一か所に集約させて植えたとしても熱を加えることによってもともと真っすぐな化繊の弾力を解けにくいように変化させることができます。 人毛の場合には…人毛は本数をまとめて縫い付けると、毛髪のもともとの弾力で解けやすくなってしまうので、多く植えてあるのものでも3~4本ぐらいが限界なのかなと思います。比較してみると同じ毛量をネットに植えたとすると、人毛の植毛の方が労力がかるということも分かります。ここでも人毛ウィッグのコストが上がってしまう要因になるのかと思います。当然デリケートな人毛ですからブラッシングを荒くしたりするとファイバー毛に比べネットから解けやすいので、優しく扱っていただければ幸いです。
ウィッグにどのぐらいの長さの毛が手植えで植えれるか?
手植えで髪の毛を植える際、髪の毛を2等分( 半分 )にして指に挟むようにして、ネットに引っ掛けるように結んでいきます。( 詳細は上部の動画をご確認ください ) 写真はヘアドネーション( ご寄付 )いただける長さ12インチ( 30.48㎝ )を参考に赤い糸15㎝、青い糸30㎝を用意しました。 まずは赤い糸15㎝を2等分にして結んでみると以外に短くて手中の遊びが全くないので、結んでいるうちに髪の毛が手の中でバラバラになってしまいます。 次に青い糸30㎝で結ぶと大分手持ちの遊びに余裕がありますよね。 他のサイトやSNSでもヘアドネーションいただく髪の毛は15㎝から大丈夫なの? などご質問をいただきますが…( 15㎝ = ダメということではないですよ! )職人さんによってスキルや見解は違うと思いますが総手植えするウイッグには15㎝の毛髪を手で結ぶにはかなり高度テクニックが必要というか、手植えは不可能です。 そして、髪の毛を引っ張っても抜けにくいように、基本1:1の長さで結んでいくので15㎝の半分で結べたとしても7.5㎝では、男性のショートスタイルにもなりません。 そのため短い髪の毛を上手に使うにはミシン縫いや、PUのパーツなどとして流用して加工しなくてはなりません。
ウィッグ【 カットについて 】
「 ウィッグのカットをすることはできますか?」 素材・メーカー問わずもちろんできます ! ちょっとコツはいるんですけど以外に簡単に切れるんです。 ウィッグのカットでは素材によってハサミの刃が傷みやすいので、ウィッグ用にハサミを用意します。 また、梳きばさみ( セニング )もウィッグの毛切りやすい!っていう形状のものがあるんです。
ファイバー( 化繊 )ウィッグの毛先がチリチリになってしまった!
ファイバーのウィッグを使っていて、毛先がチリチリになりました。 原因は『 静電気 』です。ファイバー( 化繊 )は『 ポリエステル 』なので、洋服との摩擦や髪の毛(ファイバー)× 髪の毛(ファイバー)の摩擦で静電気がおこります。 特に冬場の乾燥する時期は静電気が立ちやすくなります。 また、静電気を帯びやすい方、良くパチパチ感じる方ほどウィッグが傷みやすいような気がします。 静電気を帯びたファイバーウィッグは、まず、スチームアイロンを使用してヨレを修正していき、ある程度伸びたモノをさらに真直ぐにとあらば、アイロンで耐熱テストを行い伸ばすことが可能です。
化繊繊維の特性として、熱を加えれば柔らかくなりますが 素材によって耐熱温度が異なること 高熱だと断毛してしまうこと そのためファイバーウイッグのメンテナンスやクセを付けることについては、ちょっとコツが異なるので、撮扱いにはご注意ください。 また、メーカーさんより注意事項として『 耐熱 』に関し、留意するように伝えられている場合などは、保障の問題にもなるので必ず確認するようお願いいたします。
ウィッグはどのように洗ったらいいの?
ウィッグの洗い方について、ウィッグを扱ってきた美容師の立場として、コメントさせていただきますが、あくまでも個人的主観ですので『 このような考えもあるんだ 』ととられていただければ幸いです。
『 汚れ 』という見かたでいきますと地毛の場合、頭皮から直接出る『 皮脂 』が枕カバーなどにも付着して『 ニオイ 』の元となります。 ウィッグをかぶる場合、ほとんどの方がインナーをかぶってウィッグをかぶります。 そのためインナーには皮脂汚れがたっぷりつきますが、ウィッグの内側にあるネット部分、ウィッグの髪の毛などにどのぐらい付着するかと考えたとき、もちろんウィッグのネットに部分には多少の付着はあります。 髪の毛には…というと、メインの付着は『 排気ガス・埃 』あたりでしょうか? もちろん、焼肉屋さんなどに行った場合には油の付着なども考えられますが『 ウィッグの髪の毛 』の汚れに関しては、シャンプーで洗うレベルではなく、お湯でしっかり流してトリートメントに配合されている界面活性剤レベルでほとんどの汚れが取れると思います。
また、シャンプー剤は『 泡 』がクッションになって地肌を洗うのに適しているかとは思いますが、ウィッグを洗うのに余計な泡は不必要に感じます。 また、ファイバーウィッグの髪の毛はポリエステルです。 洋服を洗うのにシャンプーよりも一般に皮脂汚れを洗浄する洗剤の方が適宜だったりもします。
ウィッグは基本的に消耗品としてのイメージにはなってしまいますが、 破れたネットを補修したり 抜けた髪の毛を増毛したり さまざまな補修ができますので、長くお使いいただけます! ( 安価なものにつきましては、買い替えた方が安い場合もあります。 )